毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


文化祭のとき、熱中症、約束……?

ひょっとして、文化祭実行委員長と大学生三人組に追いかけられたときのことを言っているのだろうか。


確かあのときはへろへろの中、タイミング良く水上くんに助けられ、至れり尽くせりだったと記憶している。


あまりの有能っぷりに恩を感じて……私はあのときなんて言ったんだっけ。

心の底からの感謝の気持ちと、自分史上最高の笑顔を作って……


「……お礼させて?」


「覚えててくれたんだね。じゃあ、テストが終わったらデートしよっか」


いや待てなんでそうなる。


なにナチュラルにデートに誘ってるんだ。

ついさっき私が関わりを拒否したことを忘れているのか。


それに百歩譲ってお礼のときだけ関わるとしてもだ。


お礼なのだからせいぜいなにかしらの飲食をご馳走するか、欲しいものをあげるか、が妥当だろう。

私との時間をプレゼントなんてお礼として適当ではない。


それに、デートというものは恋人同士でするものであって、顔見知り程度の私たち二人がするものではないのだ。

もっと言えば、水上くんは私が慎くんと別れたことを知らないはずだから、わざとデートという言葉を選んでいるのであれば相当性格が悪い。


「あぁ、ごめんうっかり間違えた。まだあの愚鈍な彼氏と付き合っているんだったね。言い方を変えて……水族館で僕との親睦を深めようか」

「水族館……」


と、その言葉にうっかり耳がぴくりと反応した。


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