毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
『俺、坂本慎。結城さんの隣のクラス!えぇっと、好きな食べ物はとんかつで!嫌いな食べ物は野菜……。部活はサッカー部に所属してる』
あぁ、やっぱり私の事知ってたんだ。
そんで同級生か。
とか考えていたら自己紹介が始まった。
嫌いな食べ物は野菜って小学生か。
『あと、その。さっき、小学生に話しかけてるの見て……ああいうのってボールを渡しておしまい、ってのが普通だと思うけど、ちゃんと注意してんのがなんかこう、胸にささったっていうか……』
自己紹介の続きを待っていたら彼は徐々に頬を赤く染めていき、視線は私から完全に外れ、左下のコンクリートに落とされた。
恋に興味はない私だが、一般的にイケメンとされている部類の男子高校生がこうも照れながら想いを伝えてくると、不純にもドキッと心臓が跳ねてしまう。
それから一つ深呼吸をして、
『もちろん、結城さんのことは知ってて可愛いなと思ってたけど……たった今好きになったんだ』
改めて想いを伝えてきた目の前の人。
髪と同じ真っ黒な瞳に射抜くように見つめられ……危うく演技を忘れかけるところだった。
イケメンの破壊力舐めてた。
顔がいいって危険だな。
『そうなんだね!見られてたなんて恥ずかしいなぁ〜。でも、ありがとう、嬉しい!これからよろしくね』