毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
私は一旦、抵抗するのを諦め、水上くんと一緒に薄暗くも青く光る神秘的な空間へと入っていった。
真っ先に目に付いたのは私の心をくすぐるブースで、ふっと気持ちが密かに高揚する。
「結城さん、ふれあいコーナーだって。楽しそうだね」
「そうだね!手なんか繋いでいられないね!」
私は嬉々として離した手をなまこやヒトデのいる水槽へ躊躇なく突っ込む。
普段は触れない生き物とふれあえるんだから、触らなきゃ損だ。
なまこ……ふにふにしてて気持ちいいな。
家で飼いたい。
ヒトデは見た目が可愛いくせして触るとゴツゴツなのが既視感を覚える。
ほら、見た目と実際が違うってところが誰かと同じで……。
───パシャッ
小さな生き物たちに夢中になっていると、フラッシュと共に軽快な音が小さく響いた。
それは隣から発せられたもので。
「ちょっと、肖像権の侵害だよ〜!」
隣で生き物とふれあうことなく私を見ていたらしい水上くんに盗撮された。
なお、当人は無罪を主張している模様。
そして無罪だと言いながらその写真をスマホの待受にするのやめなさい。見えてるんだからな。