毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
水上くんからの手紙を読んで最初に思ったこと。
ラブレターとはどんなものだったっけ?
これには愛よりも悪口の方が多く込められていた気がするのだけど……?
真っ白な想いを綴るのが普通なんじゃなくて?こんな真っ黒な手紙になるのが普通なの?
いや確かに合間に愛を伝える言葉はあったけれども。
後半はちょっと涙腺緩んだし、ときめきもしたけれども。
感情が忙しくて、素直な気持ちが湧き上がってこない。
なにかと私の心を読んでくる水上くんだけど、こうなることまで計算して手紙を書いていたのだとすれば本当に怖い。
狙いもよくわからないから余計に恐怖心が煽られる。
絶対に敵に回すべきではない人だ。
そして、これだけ感情がごちゃ混ぜになっているというのに、モヤモヤだけはどこかへ飛んでいってしまった。
この手紙は竜巻のようなもので。
竜巻が過ぎ去ったあとはなにもかもがぐちゃぐちゃになっているのに、空だけは雲ひとつなく晴れ晴れとしている。
それと同じような複雑な気分。
水上くんは王子様で毒舌で超能力者で変人で、魔法使いみたいな人。
随分と扱いづらく濃い人を好きになってしまった。