毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
でも、彼はそれを許してくれなくて。
ゆっくり私のペースに合わせるように歩み寄ってきていたはずが、急に飛びついてくるようにぐっと傍まで迫ってきて。
ぐるぐると思考も感情もかき乱される。
それが嫌なはずなのに嫌じゃない。
そんな矛盾した私の知らない感情すらも見透かして、容赦なくとどめを刺して、無理やり気持ちを自覚させてくる彼のどこが爽やかな王子様だと言うんだろう。
あんなの詐欺だ。私と一緒だ。
……そうだ。私と一緒なんだ。
『────そんな僕と自称醜い人である君はとってもお似合いだと思わない?』
そういえば、水上くんはこんなことを書いていた。
私のことを醜いと思ったことがないからと、ご丁寧に"自称"なんて言葉を添えて。
作った笑顔で本心を隠す、似たもの同士。
その部分だけを見ると、確かにお似合いなように思えてくる。
……そう単純に認めてしまってもいいのだろうか。
もう、馬鹿みたいに難しく考えなくても、いいんだろうか。
────彼の言うように、高校生のみんなは本当の私を好きになってくれるのだろうか。