毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
4.生まれ変わったお人形
新しい友達
あまり眠れなかった日の翌日。
月曜日。水族館に行った日と同様に、雲ひとつない快晴。
斜め上を向けば、私の大好きな水色が視界いっぱいに広がっていて、不思議と勇気が湧いてくる。
窓から入ってくる風はもう不快な熱を持っていない。
爽やかな風は、毛先まで重力に従って伸びている髪をさらりと優しく撫で、廊下の方へと通り過ぎていった。
と、そこに。
「かれんちゃん!おはよう!」
弾けるような笑顔を見せるなっちゃんが現れた。
それは朝のルーティーンで想定できていたことで。
登校中に頭をフル稼働させて思いついた唯一のキャラ変の機会だった。
本当の私ならにこりともせずに挨拶を返すことだろう。
表情筋を動かさないなんて楽で簡単なことだ。
無表情なのがデフォルトなのだから、そんなの自然に……
「なっちゃん、おはよう〜!」
笑顔を作ってしまった。
なんてことだ。自然に挨拶をすればいいと思っていたら、自然に作り笑いをするとは。
演技が染みついている証拠だと言えよう。
少し前なら喜んでいたかもしれないが、今となっては頭を抱えてしまう。
どうしたらいいのだろうか。