毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「どうしたの?なんか今日、いつもと違うような……?」
「えっ……」
「あー!わかった!髪の毛がふわふわじゃないんだ!」
「そ、そうなの。いつもは巻いてるけど、今日はなにもしてないから」
私の雰囲気が違うと気づいてくれたのかと思いきや、そうではなかったらしい。
艶のある髪の毛を手に取り声を上げる彼女は、いつもより一層瞳をキラキラさせている。
それを見れば、ふわふわよりもこっちの方が好みなのが明らかだ。
ひとまず、ストレートの髪はウケがいいことがわかった。良かった。
たったこれだけのことで安堵しているとは、臆病にも程がある。
自分の心の弱さに呆れていると、もう一人の仲のいいクラスメイトがやって来た。
「あっ、凛ちゃん!おはよう!」
「千夏、おはよう。かれんもおはよう……って、なんだか今日はいつもと違うわね」
「……そうかな?」
会って早々に図星をつかれ、反射的に否定してしまった。
それでもなお納得のいかない顔をしている凛ちゃんに、鉄壁の笑顔を向ける。
はて、話の流れとはどのように作るものだっただろうか。
今のは『そうだよ』と答えてネタばらしするところだったろうか。