毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
いや、でも。一日のスタートからキャラを変えるという計画が崩れた時点で、二人には懇切丁寧に話をするべきだろう。
少なくとも、こんなところで軽く話せるようなものではない。
だから、すっとぼけるのが正解なはず。
これでいいんだ。
……なんて、二人の反応が怖いから先送りにして逃げているだけなのだけど。
「あー、言われてみればなんか違うね!かれんちゃんはいつもはこう……しゃんとしてるんだけど、今日はなんだかふにゃふにゃのびくびくって感じがする!」
「そうそうそんな感じ。だけど、かれんが否定するのなら私たちはそれを信じるだけね」
「そうだねー!」
人の感情に鈍そうななっちゃんにまで見抜かれていることに唖然としていると、心をぐさりと貫かれるような単語が飛び込んできた。
私の言葉を、信じる……?
私は散々あなたたちを騙してきたのに?
どうして、そんなことが言えるんだろう。
いや、そんなことよりも。
私を信じると言ってくれている彼女たちを、私が今まで騙していたと知ったら。
彼女たちは激怒して離れていってしまうのではないだろうか。
もう二度と信じられないと、視線すら合わせてくれなくなるのではないだろうか。
そうだ。信じていた人に裏切られたら、誰だってそうするに決まってる。
そうして私はまた一人ぼっちになってしまうんだ。