毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


……なんだあれ。


手紙では女子たちのことを散々ディスっておいて、今日はファンサービスを振りまいている。


完璧な、どこか一線引いているような作った笑顔ではなく、それはもう目が合えば誰でも落ちてしまうんじゃないかと思えるほどの極上の笑みだ。


普段は女子たちと一定の距離を保っているのに、目の前に映るのはべったりと密着する女子を拒否しない彼の姿で。


ふつふつと静かに怒りが湧いてくる。


わかっている。わかっているとも。
彼からくっついているわけではない。ただ拒否しないだけだ。


彼は爽やかな王子様。彼女たちを拒否するわけにもいかない。
だから、彼が悪いわけではない。


そんなことはわかっている。


……でも、私にラブレターを送ったその翌日にわざわざ私がいる教室の前で立ち止まって、それを見せつけなくてもいいだろう。


彼は空気が読めるはずの人間だ。
私が愉快な気持ちにならないことくらい想像つくだろうに。


わかっていてするということは私に嫌がらせでもしたいのだろうか。


私が何度も拒否した挙句『待ってて』なんて言ったからだろうか。


……呆れてほかの女子のところへ行こうと思っているのだろうか。


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