毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
彼女たちとの距離を空けられればと近づいたはずだったのに、それどころか感情に支配され、思ってもないことを言ってしまった。
そもそも、彼が誰を選ぼうが咎める権利など私にはなく、彼からすれば逆ギレに等しい。
周りが言葉をなくしているのも当然の反応で……
「かれん……ちゃん?」
そう確認するように私を呼ぶのはすぐ後ろまで来ていたなっちゃん。
大きめの目をまんまるにしている。
さらにその後ろの方へと目をやると、同様に驚く人々ばかりで。
……やってしまった。
水上くんに関わると素が出やすいというのはわかっていたはずなのに、なにも考えずに近づいたのだからそれはこうなる。
今更どうしようもないと思った途端に表情筋も仕事をしなくなったらしく、うまく口角が上がらない。
とりあえず、今が新しいチャンスなんだということはわかる。だから私は、
「なっちゃんと凛ちゃん。私の話を聞いて欲しい」
二人へ向けてお願いをした。
そこにはなんの色もなく淡々と言葉が響くだけ。