毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
なっちゃんは驚きながらも無言で頷き、凛ちゃんは落ち着いた様子から微笑みを見せた。
話を聞いて貰えるとわかっただけでもほっと一安心だ。
そのあと彼女たちが私といてくれるかどうかはわからないけど。
二人が寛容で良かった。
「じゃあ、お昼休みに」
話せば長くなるからと思い、それだけ告げて自分の席へと戻っていく。
席に着いて改めてぐるりと周囲を見渡したとき、入学したての頃もこんな風に集中的に視線を受けていたな、なんてことを思い出した。
そんな中、水上くんのところでぴたりと視線が止まる。
教室の外にいる彼をよく見ると、目的は達成したと言うように彼女たちから距離を取り、顔にはいつもの不動の笑みを浮かべていた。
これは……私はまたもや彼の思惑どおりにやってしまったらしい。
平然とやってのけるところがまた彼の怖いところだ。
『良かったね』
私が女子たちからの視線を受けている間に口パクでそう伝えてきた。
良くはないだろうと詰め寄りたくなるのをギリギリのところで堪え、視線を逸らすに留めた。
彼が強引なのは今に始まったことじゃない。
それに、強引なのは考えものだが、結果的に見れば私にきっかけを作ってくれたことになる。