毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
また今回も例に漏れず、私が演技に慣れすぎて機会を逃してしまうことを想定していたのだろう。
だからこそ、女子たちの密着を拒否せず、彼女たちと私へ向ける笑顔を使い分け、私の嫉妬心を煽り、皆の前で仮面を取ってみせたのだ。
その手腕はさすがだとは思うが、毎度のこと私の動向を見透かしすぎていて少々気持ち悪い。
不思議な力でもあるのではないかと疑いたくなるほど的確に見抜くとは。
そのようなもの、この世には存在しないのだけど。
「か、かれんちゃん!課題はやってきた?」
「やってきた」
恐る恐る話しかけてきたなっちゃんに真顔で返す。
そこに便乗して凛ちゃんも何気ない話にまざる。
いつもどおりのその形。
ただし空気は少しだけ歪んでいる。
それを壊したのは私で、時間が経てばその空気は戻っていってくれるだろうかと。
まだ一緒にいてくれる二人を横目に、刻一刻と過ぎていく時計の針を眺めて、罪を告白するそのときを待ったのだった。