毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす



「実は私、すごく可愛くない子なんだ」


ついにやって来たお昼休み。

普段は慎くんとご飯を食べている空き教室でそこになっちゃんと凛ちゃんが加わり、私はひとまず二段のお弁当を無言で食べ進め、一人だけ完食したあとに話を切り出した。


なんの感情も乗せずに三人へ向けて水上くんに話したことと同じことを話す。


朝からこの時間までの間に感じていた緊張はどこかへ消え、淀むことなくスラスラと言葉を紡げて。


時折、なっちゃんが口から意味をなさない言葉を漏らし、慎くんも顔をゆがめ、凛ちゃんだけが私と同じように淡々としていた。


そしてすべてを話し終えたとき、


「かれんちゃん……好きだよぉっ……!」


ぐしゃぐしゃに顔を濡らしたなっちゃんが私の顔色を伺うでも、私から離れるでもなく、勢いよく抱き締めてきた。

いきなりのことで上手く受け止められずにぐらりと椅子ごと揺れたが、かろうじて倒れずに済んだ。ちょっと心臓に悪い。


「ずっとほんとの気持ちを押し殺し続けるって、苦しかったよね?お母さんのことも自分が悪いんだって責め続けるの、辛かったよね?」


息が止まりそうなくらい強かった抱擁が徐々に緩んでいき、片方の手が私の頭の上に優しく乗せられる。


それがテンポよく艶のある髪の上を滑り、しばらくしてようやく慰められているのだとわかった。


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