毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「私はまだほんとのかれんちゃんをちょっとしか見てないからわかんないけど……他の人のために嫌な思いをさせないようにって、頑張ってるかれんちゃんはきっとすごく優しい人で。私が好きな"優しさの塊"みたいなところは昔から変わってないんだって思ったよっ……!」
そう言葉を続ける彼女の顔は、まるで今までの話を経験したかのように苦しみに歪んでいて。見ているこっちまで視界がぼやけそうになるほど。
私は今まで自分のことを優しいだなんて思ったことはないけれど。
すべてを聞いた上で彼女がここまで激情を露わにして訴えかけてくるのだ。
頑なに殻に閉じこもっている私が馬鹿みたいに思えてくる。
「かれんちゃんは中身がいいんだよっ!私は、可愛くないかれんちゃんも好きっ……!私は絶対離れない!だから、もう可愛いフリなんかしなくていい……自分の好きなように、自由に生きていいんだよ!!」
それらの言葉で、カチンコチンに固まっていたものがじんわりと溶けていく。
溶けていったものが目からぽろりとこぼれ落ち、制服のブラウスにしみを作った。
最近は涙腺が壊れているらしい。
とめどなく雫を作ってはそれらを落としていくから、私の顔はなっちゃんの顔と同じくらいぐしゃぐしゃだ。