毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


「鈍感な千夏と違って、私は薄々気づいてたけどね」

「えっ……?!」

「周りの行動や反応を見たとき、自分がどうすればいいかを考えているせいで一瞬だけ遅れて反応してるからね。よく見てないとわかんないし、頭の回転が速すぎて違和感を覚えるほどでもないから他の人は気づかなかったんだろうけど」

「気づかなかったぁ……」

「仕方ない。かれんは周りの目や気持ちに敏感で、対応するのが上手いから。それををわかった上で観察してると、千夏との言うように心が優しい子なんだなって思ったよ。優しくなきゃ相手の望む反応なんて出来やしない」

「なるほどぉ……」


私を挟んだまま会話を続ける二人。
凛ちゃんにはどこか水上くんに似た鋭さを感じずにはいられない。


というか、観察ってなに。
密かに私のこと見てたってことか。全然気づかなかった。


「とにかく、かれんちゃんの良さはわかってるんだから、これからは素でいてくれると嬉しいな!」

「そうね。また違うかれんを見てみたい気もする……期待しておこうかしら」


なっちゃんも私もいつの間にか涙は止まっていて、湿っぽさはどこかへ飛んでいってしまった。

今あるのは明るい陽だまりのようなぬくもりだけ。


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