毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「本当に、ありがとう」
もう一度伝えたくて感謝を口にすると、口元が緩んで、自然と微笑みの形になる。
それを見たなっちゃんがまた飛びついてくるから、私と凛ちゃんは顔を見合わせてわざとらしく呆れた顔をした。
何気ないこのやり取りも、私を認めてくれる人たちが複数いることも。
そしてこれからもそれが続いていくであろう未来が、全部が、幸せだ。
しばらくそんな時間に浸り、そろそろ昼休みも終わるかと意識を別のところへ向けたそのとき、
「あ、忘れてた!」
「いや、忘れんなよ……」
「かれんへの愛を伝えないからでしょ」
「そこは空気を読んで、友情が深まるのを待ってたんだよ!」
私たちは慎くんがいたことをようやく思い出す。
一言も喋らず完全に空気と化していたから無意識に仲間外れにしてしまった。
わざわざ女子だけの世界が終わるのを待ってくれていたらしい。
「でも、彼氏なんだし割って入ってくれても全然おっけーだったのに!」
なっちゃんのその一言で、部屋がシーンと静まり返った。
なんとなく気まずい空気が漂う。