毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
と、そこで。
「……あ、予鈴が鳴った。ほらそこ、意味のわからないところで笑わない。戻るぞ」
楽しい時間を学校中に響くチャイムによって中断させられた。
私に大笑いされたことで拗ねたのか、それともここでは立場がないことがわかっていたたまれなくなったのか。
慎くんは私たちを待たずに、真っ先に教室へと戻っていった。
「今日告白するの?」
そして邪魔者がいなくなったと言わんばかりに嬉々として私の顔を覗くなっちゃん。
慎くん……可哀想に。
「うん。告白と言うより、報告に近いかもしれない」
「なるほど、だから緊張してないんだ!」
「そういうこと。今はやっと言えるんだって嬉しい気持ちでいっぱい」
我慢し続けて溜めに溜めたこの想いを伝えられるんだと思うと、嬉しくて仕方がない。
「よかったね。そういえば、私もかれんにお礼を言わないと。過去の話をしてくれてありがとう」
「私もお礼を言う!かれんちゃん、ありがとう!」
さらにはこんなにいい友達に巡り会えたことも。
あぁ、いけない。壊れている涙腺が気を抜くとまた緩んで泣いてしまいそうだ。
授業に出なければいけないのだからそれはダメ。今日の夜、一人で思いきり嬉し泣きをすることにしよう。
「こちらこそ、本当にありがとう」
新しい友達へ向かって三度目のお礼を言ってから。
共に自分たちの教室へと戻ったのだった。