毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


だから、今日は一刻も早く水上くんに会わなければいけないのだが……


「……一応まだ校舎内にはいる」


王子様はどこへ行ったのやら。
とりあえず、靴箱を覗いてほっと一安心。

私のように雑用でも手伝わされているのだろうか。

うろうろと宛もなく校舎内を巡回する。

そうして見覚えのある教室の前まで来たとき、


「───やっと会えた」


探していた相手はそう呟くと私の手首を掴み、そのまま部屋へと引き込んだ。


前回とは空き教室に入る状況も手段も全く違っていて、私の脳みそは冷静だ。


ただ、私と同じように彼も私に会いたいと思ってくれていたのがわかって、胸が小さく跳ねる。


最初からこんな調子だと先が思いやられるな。
もう少し、好きの気持ちを減らしたいのに自分じゃどうしようも出来ないのが困る。


解決策としては今すぐここから出ていくことだが……そんなことするわけないし、なにより目の前の王子様はどうやら私を離す気がないらしい。


手首を掴んでいた手が離れたのは一瞬で、そのあとすぐに後ろから全身を捕えられた。


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