毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
特になにも考えずにぼーっとし始めてからきっちり五分後。
「ホームルームを始めるぞ」
ガラッと勢いよく扉が開き、普段はだらっとしているくせに、今日は妙にキリッとした様子の担任の先生が入ってきた。
二学期初っ端だから気合いが入っているのだろう。
しかし今日は夏休み明けの初日。
先生と生徒の温度差は激しい。
やる気が出るはずもない私は、先生の気合いとは対照的に、再びぼーっとして右耳から入った言葉をそのまま左耳へと流す。
雲ひとつない青空の下、恐らく誰もいないであろう寂しい校庭に力の抜けた目を向けようとしたとき、それを瞳に映す前に自分の顔が反射してうっすらと窓ガラスに映った。
普段、多くの視線を集めているそれは誰もが羨むもの。
私にとっては変われることなら今すぐ誰かと取り替えてほしいものだ。