毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


そう、思ったのに。


「じゃあ、そろそろキスしてもいいよね」


急遽、新たなミッションが追加された。


くるっと、いとも簡単に身体を反転させられ、視線がばっちり重なり合う。

月曜の朝に一時的に振りまいていたのと同じキラッキラの笑顔を向けてきた。

どこからどう見ても上機嫌。

それは私がようやく水上くんのものになったからか、それともキスすることへの喜びか。


「目、閉じて」


いつかと同じセリフを吐くと、身長の低い私と唇を合わせるために私の顎をくいっと上げ、整った顔を近づけてくる。


……いや、ちょっと待て。私の意思は無視か。

付き合ってすぐにキスをするなんて、早すぎるんじゃないのか。

恋愛ど素人の私に高度なスキンシップを求めるのは酷だと思わないのか。

そもそもどうしてこうなった。
意味不明すぎる。


「ダメ」


パニック寸前の私はかろうじて、水上くんと私の口の間に手を挟み入れることに成功した。

いろんな意味で心臓がドキドキしている。

私の手のひらにかかる水上くんの吐息も、私を静かに見つめる熱のこもった瞳も。


水上くんの放つすべてが艶めいていて、その雰囲気に流されそうだ。


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