毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
……と、ここまで考えたところで気づいた。
あれ。もしかして私、今、初めて水上くんのことを好きって言った?
「やっと言ってくれたね」
「ごめん。今気づいた」
「このタイミングで言ってくれるとは思わなかったよ。嬉しすぎて一瞬息が止まった」
そう言う彼は今まで見たことないくらい柔らかな笑みを浮かべていて、胸がきゅうっと甘く締め付けられた。
私が想いを伝えることでそんなに喜んでくれるのなら、惜しまず気持ちを曝け出そう。
「私を見てくれて、気づいてくれてありがとう」
私の細かな行動も視線の先も気持ち悪いくらいに見てくれて。
私の本当の姿、欲しいものに気づいてくれたおかげで、私の心は満たされた。
「見守ってくれて、背中を押してくれてありがとう」
私が小さな世界に閉じこもってしまわないように。
水上くんだけに依存してしまわないように。
私自身が動けるように、勇気をくれた。
……最後は力技だったけど。
今となってはそれもありがたいと思える。