毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


「私を好きになってくれてありがとう」


可愛くない私が一番好きだと。

ありのままの姿を、受け入れてくれると。

一緒に幸せになろうって、最後にはプロポーズじみた言葉までくれた。


水上くんはたくさんのものを私にくれた。


私は今、なにを返せるか。
なにを返せばいいのか。


無力な私にあげられるもの。それは一つしか思い浮かばない。



「水上くんのことが大好き」



その言葉を口に出した瞬間、余計に愛しさが溢れ出て、私は水上くんのことが好きなんだと。そのことしか考えられなくなって、頬が緩んだ。

好きだって伝えられることが嬉しくて、喜びが表へと飛び出した。


そのせいか、それとも好きという言葉のせいか。


「結城さん、それはずるいよ」


俯いて顔を手で覆う水上くんがそこにいた。

隙間から見える頬の色と耳の色が白から赤く染まっていて、なんだか可愛らしい。
愛しさが増していく。


「今日しか言わないから大丈夫」

「それ、大丈夫じゃなくない?」

「じゃあ好きだって思ったら言うことにする」


私は表情に出にくい分、言葉で表した方がいい気もする。

そうだ、なるべく素直になろう。
意地を張るのは苦しむだけだと学んだばかりだ。


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