毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
……っ!しまった……!!!
と内心、焦りに焦った。
慎くんがトイレへ行ったことにより、私は現在ひとりぼっち。
男ホイホイである私が一人でいていいわけが無い。街中の人混みに紛れていてもナンパされるのだから、周りに男しかいないここでナンパをされないわけがない。
絶対的な自信がある。これは自惚れでもなんでもなく、事実なのだ。
──チャリンッ。
私も一緒にトイレへ向かえば良かったものを、ビターチョコという、スーパーに行けばいくらでも手に入れられるものに後ろ髪を引かれていたばかりに。
私はバカです。こんな初歩的なミスを犯すなんて。
って、え……?
──ガコンッ。
「はい、あげる」
「……どうもありがとうございます」
あれ。なんで私はナンパもされずに景品のビターチョコを貰っているんだ?
私が一人反省会をしている間にお金を投入し、一回で景品を取った目の前の男の子。
ぱっと目に付いたのは私と同様に異色の髪。
明らかに染めた色だとわかる人工色なのだが、それを地毛だと言い張っても納得出来る顔立ちに一瞬、見惚れてしまった。
……なぜ私にチョコをくれたのだろうか?
再び最初の思考に戻り困惑している私に、チョコをくれた同じ高校の制服を着た男子生徒が不思議そうな顔でこちらを見つめる。