毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


「昨日の放課後デートの時に取ったんだ〜」


にへらぁ、と、いつも彼女が彼氏とのラブラブエピソードを話す時にしている、緩みきった顔を真似してみた。

上手く出来ているかはわからないけれど、恋をして浮かれている女の子、に見えていると思う。


「ついに初デートしたんだね!おめでとう!ちゅーした?した??」

「してないよ〜」

「坂本君は草食系か……ふむふむ」

「デート楽しかったよ、お菓子も取ってくれたの!」


ただでさえ周りが聞き耳をたてているというのに、教室で大声でちゅーなんて言わないでもらいたい。

これは、もし本当にそういうことをしたとしても絶対に口には出来ないな。
そもそもするつもりはないけど。


……最近の高校生は進んでいるもんなぁ、とも、どこか他人事のように思考が端に浮かびつつ、顔が引き攣りそうになるのを全力で止め、ピンク色の話から色気のない話へと変換する。


「はい、幸せのおすそ分け、苺味だよ」

「かれんちゃんからチョコを貰えた?!一生大切にする!」

「一緒に食べよう〜」


私のファン一号だと豪語する彼女の奇行をやんわり阻止するべく自分もチョコを取り出す。


彼女に渡したのは、昨日の景品の苺味のチョコ。


家に置いていてはチョコは減らず、賞味期限が近づく一方になる予感がしたため、学校に持ってきていたのだ。


私が手に持っているのは苺……ではなくビター味。


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