毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


「あれ、今日は彼氏と食べないんだ?」


口の中で溶けたチョコを飲み込み、家から持ってきた自作のお弁当を机の上に置いたところで、一度席に戻ったあと自分のお弁当を持ってきた古川さんが訊ねてくる。


「今日は部活のミーティングがあるみたいで早く食べるらしいんだ」

「それなら一緒に食べよう!」


お弁当をかかげ、一つの机の周りに椅子を三つセットする。


「ありがと〜!嬉しいなぁ」

「はぁ……可愛い。……いたっ」

「かれんと食べるの久々ね」


にやにやとスマホのカメラ機能を起動させ、こちらにかまえていた古川さんにチョップが入る。

攻撃を放ったのは傍で一言も言葉を発さずにやり取りを見ていた霧生凛だ。


昨日、ホームルーム終わりに私に声をかけてくれた、この学校で最も親しい人物といえる。


素の私と似た性格をしているから思考の温度差というものがなく、他の人と比べて接しやすい。


……古川さんは温度差がありすぎて一周まわって大丈夫になってきた頃だ。慣れと言う。


「凛ちゃん、卵焼きちょーだい。あーん」

「ほんと、かれんは私の家の卵焼きが大好きよね」


だってふわふわしてて、口の中に入れた瞬間のだしの香りがまた食欲を刺激するというか、噛むとそのだしがまたじゅわっと口の中に広がるのがたまらなくて……なんて、言えない。

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