毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


まぶたを縁取るまつ毛は1本1本が長く、それらは絡まることなく緩やかな曲線を描いて上に伸びている。


これだけでもフランスの可愛い可愛い"お人形さん"を連想させるには十分なのだが……



「かれん!なにぼーっとしてるの?もうホームルーム終わったよ」


……っと、窓に映っている自分を眺めていたら思いの外、時が経っていたらしい。


高校に入って一緒にいることが多くなったクラスメイトである彼女が私に声を掛けてくれた。


滅多に大きい声を出さない彼女に大声で名前を呼ばれるほどに、私の意識は深いところに沈んでいたらしい。


「えへへ、ごめんね。教えてくれて、ありがとう〜!」


反射的にニコッと愛嬌のある笑顔を"作って"立ち上がり、その勢いのまま彼女に飛びついてハグをする。


ある程度親しくなり、この行動も数回目となるからか彼女はよろけることもなく、しっかりと私を受け止めた。


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