毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
【かれんside】
二学期初めての体育の授業から一週間。
あれから何度かバスケの試合をしたが……70%くらいの力を出したのはあの一試合のみ。
視線を集めていたのがわかっていたから、前半は負けない程度に力を出した。
あからさまに手を抜くと成績に関わるから"負けない程度に"だ。
……成績は捨てきれない。
あのときの体育の時間は男女共に騒いで授業になっていなかったため、どちらも先生からしっかり釘を刺され、わざわざ放課後に補習を受けるという苦行をしたくない生徒達は大人しくなった。
よって、男子コートの盛り上がりと女子生徒の観戦というカモフラージュがなくなった体育館では、私がバスケを楽しむことが出来なくなったのである。
まぁ、実技テストでいい点を取ればいい。
テストの時間は体調不良を装って、後日補習という名目でテストを受ける。そうすれば先生にしか見られずに済む。完璧だ。
「それでは、実力テストの結果を返すぞ。順番に取りに来い」
そして今は昼下がりのホームルームの時間。
苦い顔をする者、自信ありげな顔をする者、興味なさげにスマホをいじっている者。
私は興味なさげに外を眺め……たかったが、それよりも先になっちゃんが仲間を求める目でこちらを見たので、同じ表情を作って返すしかなかった。