毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「盛り上がっているところ非常に申し訳ないが……」
と、今まで注意するでもなく、事の成り行きを見守っていた担任の先生が教団の上から、会話に割って入ってきた。
なんだろう。なぜかとても嫌な予感がする。
「───結城。このクラスの文化祭実行委員に任命する」
……は?なんて?
その単語、私の辞書に載ってないんだけど。
「理由は……わかるよな?みんなに知られたくないもんな?」
はっとすぐに思い当たった原因。
すぐに机にしまった紙を思い出す。
そして、成績がバレないように態度に出さないで欲しいと頼んだ時、このふざけた担任が不敵に笑っていたことも思い出した。
クジで決めてもいいようなことを……なんでわざわざ私に。
いや、理由はわかる。
どうせ成績優秀でくそ真面目な私だから仕事をきちんと最後までこなすだろうとか、お人形さんの虜は多いからクラスメイトも従ってスムーズに進められるだろうとか……そういうのに利用されたんだろう。
シンプルに腹が立つ。
今すぐ胸ぐらを掴んで一発ぶん殴りたい衝動に駆られた。
あー、でも。
「仕方ないな〜、楽しそうだしやってみる!」
選択肢がひとつしかない私は、引き攣る表情筋を過去最大に稼働させて満面の笑みでそう答えたのだった。