毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
2.爽やかな王子様×可愛いお人形
王子様との関わり
「有り得ない。あのテキトー教師。ねぇ、舞。酷いと思わない?」
静かに愚痴をこぼし始めてはや五分。
可愛いゆるふわオーラはどこへやら。
いつもの数段低い、冷たい声。
近くに居たら夏でも背筋に寒気が凍るよ、と舞には前から言われている。
意識的に低い声を出しているわけじゃないんだけど、どうやってそんな声を出しているんだろう?
自分の声帯だというのにどこか他人事のように不思議に思う。
『それまた災難だったねぇ……かれんちゃんは真面目だし、要領もいいから完璧に仕事を全うしちゃうんだろうけど』
中学からの親友である舞が苦笑いをしているのが電話越しでもわかった。
先程、文化祭実行委員などという確実に面倒な役割を理不尽にも任されて、怒りでどうにかなりそうだった私は救いを求めて屋上へとやってきた。
ドアを開けると空には筆で絵の具を塗りたくなるような、真っ青でまっさらな青空が広がっていて、太陽が容赦なくじりじりとコンクリートを熱している。
この暑いときにそんな場所へ来る人もいない。
そんな好都合な場所で私はわりと頻繁にこうして舞と連絡を取っているのだ。