毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


「はいはい、どういたしまして」


やはり私の行動には慣れたようで、流すようにぽんぽんと頭を撫でる。
その様子は傍から見ると仲睦まじい姉妹のようで。


「かれんちゃん、また抱きついてるの?」

「本当、甘え上手というか……似合ってるから許せるんだけどね」

「私のところにもおいで?」


なんて口々に、周りがおおよそ同様の反応をする。


男子に至っては彼女を羨ましそうな目で見ていて、穴が空くのではないか……?と心配になるくらい、集中的に視線を受けている。


……この行動を意図的にやっている身としては少々胸が痛む。


だからといってやめることはないんだけども。


「ん〜?お誘い?じゃあそっちにも飛びつく〜!」


おいで、と腕を広げて待っていた別の女の子の腕の中へ再び勢いよくダイブ。


もちろん、愛嬌のある笑顔と共に。


ところで、夏休み明けなのだから当然気温はまだ高く、溶けるような暑さだ。


温暖化が進むこの世界の暑さは九月上旬も八月も変わりない。


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