毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
……そう、平和だったはずなのに。
「あれ、結城さん達も買い出し?」
まさか買い出しの行き先と時間がかぶるなんて。
クラスメイト数名と共に商品を見ていたはずが、こちらに気づいた王子様。
その言葉で一気にこちらに視線が集中する。
「そうだよ。迷路型脱出ゲームをするから必要なものを買いに来たんだ〜」
最近流行りのリアル脱出ゲーム。
他のクラスと被らず、かつ教室で出来るものを考えた私は迷路型の脱出ゲームを提案したのだった。
「そうなんだ!俺たちはお化け屋敷をするんだけど、買う物とか多分おなじようなやつだろうし、みんなで回ろうよ!」
文化祭の準備というのは、要は規模の大きい図画工作のようなもの。
大きめの道具は学校で準備してもらっていて、今回私たちが求めているものは整理券や広報用等の細々とした材料。
それらは自分たちで買いに行く決まりだ。
「いいね!買い終わったらみんなでファミレスとか行っちゃう?」
「おー、行こうぜ!買い出し組で良かったー!!」
王子様の隣にいた男子が話を広げ、こちらにいたクラスの女子もそれに賛同したことにより、一気にご飯にまで発展してしまった。