毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす



「最近はいろんな種類があっていいよね」

「うん!テンション上がる!……どれにしよっかな〜?」


振るだけで芯が出てくるタイプや勝手に芯が回って尖り続けるタイプ。
性能だけじゃなくてデザインも豊富で、選びがいがある。


勉強するためのモチベーション向上に繋がる文房具選びはそこそこ重要だ。
自然と気分が高揚し、それが言葉となった。


そんな中、目を引いたのは便利な性能があるわけでもないごく普通の、水色のシンプルなシャーペン。


水色が一番好きなんだよなぁ。
これにしようかな。

一瞬、自分のキャラのことなんか忘れて手を伸ばしかけたその時。


「あっ、これ、かれんちゃんに似合う!」


隣にいた女子が、私が見ていたシャーペンの三つ右にあったシャーペンを手に取って、こちらへ差し出す。

反射的にそれを受け取り、見てみると、


「ピンクをベースに白色のハート。ね?可愛いでしょ?」


いかにも女の子らしいデザインのシャーペン。

私の好みなんて知るはずもなく、純粋に良かれと思ってのことだろう。
彼女は笑顔で勧めてくる。

それを無下にして拒否することなど、誰が出来るものか。


「確かに可愛いね!これにしよーっと!」


ありがとう!と、お礼を言ってそのままレジの方向へくるりと方向転換する。
シャーペンの陳列を見ていたら、なんだか虚しくなって笑顔が剥がれ落ちそうだったから。


< 56 / 207 >

この作品をシェア

pagetop