毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「実は、もうすぐ妹の誕生日でね。プレゼントをまだ買っていなくて何にしようか悩んでいたんだけど……それを見たとき、妹によく似合うな、と思ったんだ」
またもさらさらと流れるように口を開く。
あまりにも説明的だから嘘っぽいと思ったが……私としては特にこのシャーペンに思い入れも何も無いのだから断る理由はない。
欲しいと言う人がいるのなら、その気持ちを優先してあげたいところ。
しかし、一度は建前上は断っておくべきだろう。
なにせ、クラスの女子が私に似合うとオススメしてきた物で、私もそれを喜んで買ったのだから。
そう、"一度は"断っておくべきなのだ。
「そんな理由があったんだ……でも、これ、せっかく選んでもらったものだもんなぁ……」
困ったなぁ……と、私にこのシャーペンを選んでくれた女の子をわざとらしくチラッと見る。
「そうだよね。無理を言ってごめんね」
潔く引いた王子様は私と女の子のそれぞれに向かって謝ったあと、私と同じようにチラッと女の子を見た。
両者からそれぞれチラッチラッと視線を受け、固まっていた女子があわあわと落ち着きの無い素振りをみせる。
「……えっと!かれんちゃん!また今度、文房具選んであげるから、今回は水上くんに譲ってあげたらどうかな……?」
そして、形の整った眉を下げて落胆した王子様を見かね、慌てて私の方を向いて説得に転じた。
さすが王子様。思いのままである。