毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
もう一回あの店に戻って同じものを買えばいい、なんて突っ込む人は一人も居ない。
私も含めて、だ。
「わかった、妹ちゃんのためだもんね。はい、交換!」
「ありがとう。はい、どうぞ」
選んでくれた本人の許可が下りたのだから堂々と交換出来る。
日の出ていない夜でも眩しくなるような、いつもより整った笑みを浮かべた王子様からシャーペンを受け取った。
ようやく話が一段落ついたところで、私達高校生の集団はファミレスへ向かって歩き始めた。
──歩き始めて数分。
そういえば、王子様は何を選んだのか気になっていたけど聞けずじまいだった。
一度思い出してしまうと気になって仕方がない。
ガサガサとスクールバッグの内ポケットからシャーペンが入った袋を取り出す。
自分用なのにわざわざご丁寧に紙袋に入れていたのか……店員さんに断るのが面倒だったのだろうか?と思考を巡らせながら開封する。
すると出てきたのは……
「気に入ってくれたかな?」
驚きに軽く目を見張ったところ、横からボソッと小声で問いかけてきた王子様。
驚いている私が面白いのか、なんなのか。
ふふっと楽しそうに笑っている。
「……これ」
王子様が選んだのは、私が気になっていたあの水色のシャーペンだったのだ。