毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
文化祭
「あっ、結城さんいた!」
「……。ばいばーい!」
「逃げないで!!」
……なぜ、私は文化祭当日に鬼ごっこをしているのだろう?
生徒以外の人も校舎に入っているため非常に逃げ隠れしやすく、ちょこまかと人と人の間を縫って上手く逃げる私にとっては不幸中の幸いと言えよう。
「ミスコン!出てよ!結城さんが出たら絶対に盛り上がるのにー!!」
後ろで嘆くように呼び止める先輩がいるが、無視だ無視。
ミスコンなんぞ出ようものなら、ただでさえうるさい男子がもっと騒ぎ立てるのは目に見えている。
せっかく慎くんで抑制されているというのに、彼氏がいるという噂より私の噂の方が広まると意味が無くなるではないか。
文化祭には高校生以外にもその兄弟や友達の大学生が来ているのだから……考えるだけでもぶわっと鳥肌が立つ。
『私、文化祭実行委員なので、とーーーっても忙しいんです〜。それ以外の時間は文化祭を楽しみたいので!では、失礼しますっ!』
そうやって、はっきりキッパリ元気よく断ったはずなのに。