毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
両手を広げたあと、あぐらをかいた脚の上に座るようにとぽんぽんとそこを叩く。
それに従い、のっそりと動いたのちにすっぽりと彼の作った空間に収まった。
彼氏がいる身でありながら他の異性と密着している、という事実はとても不誠実なことではあるが……なんせ、今の私にはそこまで考える余裕がない。
「ん、頑張ったね。お疲れ様。今は何も取り繕う必要はないんだよ」
ぽん、ぽん、と一定のリズムで頭を撫でる大きな手に、安心感を覚える。
上から聞こえた、やっぱり含みを持った言葉はいつもの私なら警戒を強めていたけれども。
朧気な意識の中で顔を上げると、視界に入った王子様はこちらを慈しむような視線を向けていて。
『……あぁ。これはずるい。そんな顔で、素のままでいていいだなんて。安心して身を任せてしまうじゃないか』
ふわふわとした心地でぼんやりとそんなことを思いながら。
「……ゆっくりおやすみ」
ついに眠気に抗うことをやめて、頭の奥底の方へと深く意識を沈めたのだった。