毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


こうして視覚を遮ったことにより聴覚が研ぎ澄まされる。


「あの水上くん達の噂、本当かな?」

「結城さんと付き合ってるって話のこと?それならデマでしょ。結城さんは坂本くんと付き合ってるんだし」


ぽっと湧いて出た自分の名前に目をつぶったままぴくりと反応した。


「で、でも、文化祭の時に同じ匂いをさせてたって友達が言ってて……」

「気のせいじゃない?人がたくさんいたから匂いなんて特定出来ないと思う……それに、純真無垢な子が二股なんてするわけないって」


通路を挟んで反対の列の後ろの席に座った2人組の会話。
噂否定側の女子がコロコロと笑ったところで話が終わったようで別の話へと切り替わる。


純真無垢と聞こえた時は吹き出しそうになってしまった。
今まで演じてきた妹キャラがいいように作用したのだと思う。


それにしても、制汗剤の匂いで交際疑惑を持たれるとは思ってもいなかった。
高校生の想像力の豊かさを舐めていた。

いや……女子の嫉妬故の疑惑だろうか?


ツートップを股に掛けるなんて女子に殺意を持たれてしまいそうだ。
噂が本当だと思われてしまえば、校内だけでも十人には確実に刺される。


これは早急に手を打たねば……。


こうして丁度よく行事が開催されるのだから、これを利用してやるのもいいかもしれない。

出来るだけ慎くんに話しかけよう。
そして水上くんを私の持てる力全てを使って避けてみせる。




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