毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「おぉ、さすが博識の結城はそこに気づくんだな」
……ちょっとまじでいつかぶっ飛ばす。
進路が決まって先生の評価がいらなくなったときに裏で絶対苦しめてやる。
うっかりポロッと私のことを博識だなんて言ったこの男を許さない。
密かに復讐を誓った。
「ぶっちゃけ、華が欲しくて女神を入れてみた。井桁の前で両手を組んで祈るだけだ。火の神はセリフがあるけど、女神は黙って祈るだけ。簡単だろ?」
しょうもない。
本格的な儀式と思った私が馬鹿だった。
というか神聖な儀式にそんな理由で無駄なことをしてしまっていいのだろうか。
既に大人の間で決められたことなのだからどうしようもないけれど。
「簡単ですけど〜、なにかごほーびがあればやる気が出るかも?」
今殴らないという温情を与えているのだから、内心を少し上げてくれてもバチは当たらないと思うの。
生徒だからとはいえ、この急で生産性のない役割を無償で果たす義務はない。
ごほーびという単語にしばらく思案している担任をじーっと見つめる。
一分ほど経った頃にようやく口を開いた。
「仕方ねーな。前向きに考えとく」
「やったー!」
この雑で面倒くさがりな担任が"前向きに"、"考えておく"と言ったのだ。
これは期待出来る。