毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
とりあえず、ぶりっ子キャラというのは個人的に嫌いだから論外。
見ているだけでゾッとするのだから、自分が演じきれる自信もなかった。
天然というのは私の本来の性格である察しの良さとは正反対だから、演じるのは絶対に無理。
とぼけるにしても、なにいってるの?しか言えなくなって、それが口癖になってしまうのは軽く問題だろう。
他は……うーん……。
………。
……うん、考えるのめんどくさい。
と、十秒ほど悩んだところで考えることを諦めた。
もういっそそのまま、見た目通りの"周りから愛されるちょっとおバカな妹キャラ"を演じることにしたのだ。
「さてさて、きっとぼーっとしてて先生の話を聞いていなかったかれんちゃんに残念なお知らせ!」
「え……?なぁに?」
抱きしめられるまま大人しくお人形さんとなっていた私に、私をぎゅっと抱きしめていた子が上から不穏な一言を放った。
演技ではない、自然な声が漏れる。
「この学校ではなんと、夏休み明けにも実力テストがありまーす!つまり、明日テストだよ!」
漫画なら"ばばーん!!!"と効果音でもつきそうな迫力で大したことないことを言い放った。