毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


「服装は制服でいいですよね?体操服だと他の生徒と同じで神様のような雰囲気が皆無です」


私達のやり取りが終わったのを確認した水上くんが詳細について掘っていく。


「何を言っている。制服も雰囲気が出ないだろう。服装についてはこれを着るように」


そう言ってひらっと片手に突き出した白い布。
大きなシーツをくるっと巻いて縫いました、みたいな簡素な服が一枚。
男女にデザインの差は特にないらしく、ワンピースのようだ。

あとこれも、と言われて追加で渡されたのは緑色の葉で作られた冠。

ギリシャ神話の神様を模するのだろうか。

それにしてもこれは……


「先生、この衣装、薄すぎじゃありませんか?」


私が言おうとしたことを先に口にする水上くん。
眉根を寄せていて、微妙な表情をしている。

水上くんが言った通り、白の無地のかなり薄手のワンピース。


これを着ると体のラインがもろ分かり──たいして凹凸もなく思春期男子の目に優しい体──になること間違いなしである。


特に恥というものは無いはずなのだが……一応人目を引く存在の私。
時にはそういった趣味を持っている人もいると聞く。薄い布一枚というのは心もとない。


「薄いと思いまーす!なにか羽織るものください!」


上にもう一枚あれば少しはマシだと思い、遠慮なく便乗した。
ベースが白いワンピースなのだから、上に何色の何を羽織ろうと合わないことは無い。

あればなんでもいいのだ。


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