毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
はぁ、とわざとらしくため息をついた担任が部屋の中をぐるりと見渡す。
部屋に入った時は脳内が疑問符で埋め尽くされていたから気にも留めていなかったが、いくつものクローゼットとハンガーが置いてあるところをみるに、どうやらここは衣装部屋らしい。
担任は一番近くにあったクローゼットの扉を遠慮なく開くと、左から右へ視線を流し、無造作に一つを手に取った。
「この色なら暗闇でも見えるし、その髪色にも合うだろ」
レモンイエローの淡くも輝く色彩は、確かに光のない闇夜の中でも女神らしく主張してくれそうだ。
パステルカラーが好きな私としてもこの衣装は大正解。
散々私に嫌がらせをしてきた先生にしては良いセンスとも言えよう。
ぜひとも、これからもこの調子で頑張ってほしい。
改めて、受け取った衣装をじっくり観察してみる。
とりあえず広げてみたものの、なんだか複雑な形をしていて着方がよく分からない。
「こうやって着るんじゃないかな?」
しばらく衣装とにらめっこをしていた私の手からすっと衣装を引き取ったかと思うと、ごく自然に私の体にそれを重ねた。
左肩から下に向かって広がる形をしている衣装。
それをピンと張るためにも私の左肩と右腰に衣装はごと手が添えられ、体に合わせるためにも落とした腰に伴い目線がぴったりと合う。