毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
ずんずんと短い脚なりに大股で歩くこと数分。
「──ねぇ、もしかして月城高校のお人形さん?」
私達の高校とは別の制服を着た、二人組の男子高校生の片割れに声を掛けられた。
例の言葉に反応して足を止めてしまった私はかなりの馬鹿だ。
その隙にやんわりとシャツの裾を摘まれ、物理的に止められた。
私に声を掛けたのはかっこいい、よりも可愛いという言葉が似合う子。
見上げても首は対して急な角度にはならず、つまりはそういうサイズ感だということがわかる。
「先生の言ってた他校って月城高校だったのか。運命感じちゃうね」
パチッとウインクされたのをふいっと顔を背けることで拒否する。
拒否こそしたものの、この男、びっくりするくらい顔がいい。
今まで声を掛けてきた男の人の中で上位に位置する。
今どきウインクなんてする人いないだろ、と鳥肌が立ちそうなものだが、似合いすぎてそんなこともなかった。
「ねぇ、連絡先教えてよ」
「教える理由、ないよね!」
間髪入れずに元気よく、満面の笑みで答えた。
その勢いでどさくさに紛れてその場を立ち去ろうとする。
……ものの、指先に力を入れられ、シャツがぐんっと引っ張られた。
夏物だから伸縮するタイプじゃないんだよなぁ。
伸びなくて良かった。
そう思ったのも束の間で、そのままぽすん、と元の場所より相手に引き寄せられ、腕の中に収まった。