毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


それを利用してやる。
手っ取り早く黙らせたいから。

"なかったことに"の部分を強調して、きょとんとわざとらしくとぼけてみせる。


「……」


そんな私の言葉にぐっと言葉に詰まったようで、何も言い返してこない。
さっきまで人懐っこく話しかけていたのが嘘みたい。


話はそれっきりだと言わんばかりに再び食事を始めようと視線をお茶碗へ向けようとした時。


────パチッ。


「……っ?!」


こちらを見ていた群衆の中の一人の女子生徒と目が合った。
私達の学校とは違うジャージを着ているため、他校の生徒だということがわかる。


目が合った相手はなぜか驚いているようで、目を見開いて口をパクパクさせている。


驚いている理由はわからない。
噂のお人形さんと目が合ったからなのか、はたまた私の口にご飯粒でもついているのか。

後者だったら笑えるが、私がそんなことするはずもないし、笑いはしても驚きはしないだろう。


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