毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
そう、本当に大したことない。
本来の私であれば、
『へぇ。明日テストなんだ』
の一言で終わる。そのくらいテストなんてどうでもいい。
むしろ、休み明け早々に普通の授業をフルでやるよりもテストを受ける方が楽で嬉しい。
だが、私がちょっとおバカだったとしたら、学生にとって敵であるテストを大したことないと思うわけがない。
彼女の言う残念なお知らせとやらに速攻でなにかしらのリアクションを取らねば。
「えー、定期考査だけじゃないんだー?んんー。やだよ……私の代わりに受けてくれない……?」
本来の私は真顔。表情筋を一切使わない。
しかし、今の私はそれを全力で稼働させ、しょぼーんと困り顔を作ったのちに目を少し潤ませて、下から見つめるおねだり顔をしてみせた。
普段との反動があり過ぎて随分難しいものだが、完璧に演じきった。
涙腺まで操れるようになるなんて前は思ってもみなかった。努力の賜物よね。
私、凄い。