雲居の神子たち
あたりを見回しても、変わった様子はない。
もしかしてあの女はここにきていないのかもと思った。その時、

「気をつけろ、中にいる」
八雲が声を上げた。

「なんで、」
そんなことがわかるのと聞きかけて言葉を止めた。

そうか、須佐は人の気配を感じ取れるんだった。

「稲早、一人で立てるか?」
まっすぐに前を見たまま尊が聞いてきた。

「うん、大丈夫」
「じゃあ下すが、あまり動くなよ。ここでじっとしていればいいから」

そんな、ここまで来てじっとしていられるはずはない。
わたしだって、戦うために来たんだから。

「行くぞ」
「うん」

尊が目配せしてから扉を開けた。

ウウゥー。
目に入ってきたものを見た瞬間、声が出そうになった。

それはかなり凄惨な光景。
とても正視できそうもないような、

「稲早、目をそらすな」
目を閉じようとして、尊に止められた。
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