雲居の神子たち
「姉ちゃん。お詫びにつきあえよ」
やはり、男は八雲の手を取ろうとした。

「やめてください」
手を引くが、男の手が早かった。
「何だよ。人にぶつかっておいて、服も汚れたじゃないか」
睨みながら、なおも手を伸ばす。

キャー。
肩をつかまれた八雲が、悲鳴を上げた。

「やめてください!」

私も須佐も男に向かっては行くけれど、一回りは大きな男にかなうはずもない。
周りにも人集りができはじめた。

「いいから付き合えよ」
乱暴に八雲の手を取る男。

みんな遠巻きには見ているけれど止める大人はいない。

誰か助けて。
ちょっと泣きそうになりながら、男に向かっていこうとして時、

「止めとけよ」
と、男の腕をとる別の男性。

「何だよ。お前には関係ないだろう!」
怒る男。

しかし、止めに入った男性が男の腕をひねりあげた。
もちろん男も抵抗するが、ビクともしない。

強い。
体格は男の方が大きいのに、的確に急所を捉えていて動けなくしている。

「悪い事は言わないから、もう止めろ」

そう言うと、助けに入った男性が男を突き放す。
男は道端に倒れ込んだ。

「ちくしょー、覚えとけよ」
さすがに勝ち目がないのを感じた男は、捨て台詞と共に逃げて行った。
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