雲居の神子たち
「これが、気の力ですか?」
横から手を差し出して、熱を感じ取った須佐も興奮気味に訊く。

「そうだね。人間の中に流れる気の力。もちろん人によって強い人も弱い人もいるけどね」

「あなたは、強い方?」
普段人見知りの八雲も、珍しく自分から口を開く。

「うーん。強い方だと思うよ。それなりに鍛錬もしているからできる技でもあるし。でも、君たちもかなり強い力を持っていると思う」

強い力?
私たちにもこんなことができるってこと?
そんな馬鹿な・・・

「君たち、雲居の直系の血を引く子たちなんじゃないの?皇子様とか?」

「ああぁ」
「いや、そんな」
恥ずかしいくらい慌ててしまった。
これでは「はい。そうです」と言っているような物だ。

「大丈夫、俺は雲居の継承には興味ないから」

ん?
雲居の継承?

「尊、あなた何者?」
私たちの正体を見抜いてしまうところといい、持っている力といい、尊こそただ者とは思えない。
中央の政権にかなり近い血筋なんじゃないだろうか。

「俺も君たちの素性を詮索しないから、君たちも俺のことはただの旅人と思ってよ」
そう言うと、ぜんざいに付けられた塩昆布とお茶をすする。

尊の素性についてそれ以上詮索することはしなかった。
自分たちのことを追求されても困るから。

「中央の話を聞かせてください」
話の矛先を変える意味もあって、私は尊に訊いてみた。
尊も快く答えてくれる。

中央の人は尊のようなこんがり健康的な肌色の人が多いそうで、八雲のような色白美人はとてもモテるらしい。
須佐のような黒髪さらさらの男性も珍しいそうで、それはそれで人気が出そうだと教えられた。

その後も、食べ物のこと、学問のこと、恋愛のこと、色んな話を聞いた。
すべてが雲居とは違っていて、驚くことばかり。

「稲早、そろそろ戻らないと」
八雲が声をかけたのはすでに10時を回った頃だった。
「そうだね」
さすがに今日中に帰らないとまずい。


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