雲居の神子たち
あっ。
八雲がつまずいて転んだ。

「大丈夫?」
「うん」
見ると、靴の紐が切れている。
随分走り回ったからしかたがないか。

「一旦、深山に帰ろうか?」
八雲を気遣って言った俺に、
「何言ってるの、稲早を見つけるまでは帰らない」
力強く宣言した。

八雲は強情な子だ。
普段のおとなしさで、忘れそうになるけれど、
いざというときに一番肝が据わるのも八雲。
言い出したら聞かない子。

ちなみに、
八雲がまとう気配は水色。
透明感があって、ちょっと冷たい。
普段物静かで冷静な、八雲らしい。

俺たちは町の外れに向かって足を速めた。
すでに深夜。
町を行き交う人も少なくなっている。
早く、稲早を探さなくては・・・
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