雲居の神子たち
***side尊


拉致されていた家を出て俺は町へとやってきた。
同行者は白蓮の兄、石見(いわみ)

石見は俺と同いの年18歳。
日ごろの肉体労働のせいかよく鍛えられたいい体をした若者だ。
俺だって武術の鍛錬で鍛えているつもりだが、日々の生活の中で培われた筋肉はやはり厚みが違う。

「逃げようなんて考えるなよ。これでも足は速いし、喧嘩だって負けたことがない」
「だろうな」

体を見ればわかるさ。
鍛えられた体格と、ところどころに残る喧嘩傷の跡。
きっと多くの場数を踏んできたことだろう。

「喧嘩なんてすれば、おふくろさんや白蓮が泣くぞ」
我ながららしくないことを言ってしまった。

今まで、多くの国を回り色々なものを目にしてきた。
多少のことでは驚かない自信があったが、白蓮を見た瞬間息をのんだ。
それだけ衝撃的だった。

「なあ、」
不意に、石見の足が止まった。

なんだと顔を上げた目の前に、にらみつけるような視線。

「な、なんだよ」

俺が何かしたか?
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