雲居の神子たち
「いつまでも同情するな」
「え?」

「白蓮は確かにかわいそうな子かもしれないが、それだけじゃない。外には出られないが、家の中では笑いもするし喧嘩だってする。決して裕福な家ではないが不幸だとは思っていない。だから、同情してくれるな」

「すまない」
俺は石見に頭を下げた。

決して白蓮の境遇を上から見ていたつもりはない。
しかし、俺の態度が石見の気に障ったのなら謝るべきだろう。

「もういい。で、どこに行くんだ?」

少しだけばつが悪そうに、再び歩き始めた石見。
その背中はやはり大きくてたくましい。

「まずは、相手の家に行ってみるか」

ここでいう相手とは、今夜白蓮を差し出すように言ってきた金持ち。
どうやらこの町の有名人らしいから、まずは顔を見てどんな奴か知りたい。

「俺は顔を知られているから、近くまでしか行けないぞ」

「わかっている」

石見にすれば近寄るのさえ避けたい相手だろう。
無理強いするつもりはない。
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